終わった恋の忘れ方
決心がついたから。
足を進めようと思う。
彼の生き様、彼の全てを伝える為に。
終わった恋の忘れ方
随分長い事歩き回って、森に囲まれている道を進む。以前一度通った道なのにまるで初めて歩く道の様に回りをキョロキョロ見渡した。
周りに生息するカエルが五月蝿く鳴いて、耳に響く音が酷く懐かしかった。
昔。
ここに一度来た時は「そんな奴は知らない」と嘘を付いた。正確に言えば、嘘では無く忘れていた。大切なアンタの存在自体、記憶の奥底へ鍵を掛けて。もう二度とあんな思い出は蘇らない様に。
「最低だったよな 俺」
本当に。
ボソリと呟いた独り言は、空を切って風に流される。
自分が可愛くて仕方なかったのか。己を守る為だけに偽りの自分をその上から被せて。ゆっくり、ゆっくりと本来の自分を食い尽くす様に。
「ねぇ。弱い俺を叱ってよ」
そうしないと息子の帰りを待っていたあの人達が不憫でならない。
これからする事が果たして意味を為しているのか。これが成長した自分に出来る唯一の事なのか。まだ答えは見付かっていないけども。
「偽りの姿しか見せていないのは、どうしても自分自身許せないんだ」
背中に背負ったお揃いの剣に話し掛けても、返答は勿論返っては来ない。
―在りのままの自分とアンタとの思い出。
―少しでも伝える事が出来たら罪滅ぼしになるでしょうか?
暫く歩くと遠くの景色に、高く空へ上る煙が目に映る。
そっと頬をなぞる風。雪が振る少し前だからか、冷たい空気が身体を凍えさせる。暖かい南の田舎町にも遅い冬が訪れる予感がした。
「やっとここまで来たよ、ザックス」
ここまで来るのはとても長かったけれども。
やっと、もう一度。
ここは彼の愛すべき
両親の住まう村。
目の前には一軒の小さな民家。煙突から煙が出て如何にも温かみのある佇まい。
両足をしっかり地面に張り付かせ、クラウドはそっと佇んでいた。
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